2013年05月09日(木)11時12分

トルコの航空事情

題名を見て驚かれる方も多いと思う。ビジネス機のサイトに然も日本より遥かに遠いトルコが時事問題として取り上げられたのかと思っても当然と思う。事実、トルコはほんの一握りの航空専門家を除き注意を引く事もなかったが、最近発表されたICAOとACI (Airport Council International-国際空港評議会) の統計で一躍脚光を浴びた。

  •   2012年の乗降客の前年度比増加がIstanbul 20.6%と震災の乗降客の減少より回復した大阪関空の18.9%、羽田の17.3%を上回った。Istanbul 空港の乗降客数は45.1百万人と一気に世界20位に躍り出た。2013年も15%程度の成長が望まれるのでFrankfurtに追い付き追い越すのは時間の問題と見られ始めた。
  •   理由は2002年から始まったトルコ国内の航空自由化が2007年以降急速に航空機産業の成長に寄与し、乗客数も2002年34百万人から2011年には117百万人と3倍増している。トルコの人口は80百万人、日本の航空機利用客は90百万人/年前後故既に日本を追い抜いている。
  •   トルコのGDPの成長率は2010年9.2%/年、2011年8.5%/年で今後もこの程度の成長率は維持すると見られる。2011年には国民一人当りのGDPは$10,576と成ったが、$10,000を越えると航空機利用者が急速に増えると言われる。
  •   然し、トルコが一気に注目を集めたのは、Istanbulに全く新しい世界最大の1.5億人の利用客を捌ける空港を建設し、欧州、アジア、アフリカを繋ぐハブと成る計画を発表したから。
  •   日本人にはピンと来ないかも知れないが、Istanbulは欧州の東端に位置し、対岸にトルコの主要国土のアジアアナトリアが望見出来る。黒海と繋がるボスフォラス海狭、マルモラ海、地中海に繋がるダ-ダネルス海峡で欧州、アジア大陸が仕切られている。然も、南は「肥沃な三日月」地帯のパレスチナ、レバノン、シリヤ、イラクが広がりその先にエジプトからアフリカ大陸が始まる。多少歴史を齧った人なら直ぐ分かるが、トルコはヒッタイト人の拠店、Istanbulの後背地のマケドニアはアレキサンダ-大王の出身地、エジプト、パレスチナ、イラクは旧約聖書、トルコのアナトリアは新約聖書の書かれた処(キリスト教はロ-マ人国籍を持ったユダヤ人パウロによって宗教として体系化された)そしてIstanbulは東ロ-マ帝国とオットマントルコの首都。
  •   もし未だピンと来ないなら、古代より、欧州、アジア、アフリカの3大陸の結節点。Istanbulより半径2,000㎞の弧を描けば、モスコ-よりスカンジナビア、英国、イベリア半島を除く全欧州をカバ-、南はエジプト全土、リビヤのトリポリからバグダッドを含む中東がカバ-される。現代のトルコ人は蒙古族で中国西域にはトルコ人が多く棲み、ロシア正教はギリシャ正教の継承者。旧ソ連より独立した(スタン「汗」国-カザキフスタン、トルクメンスタン、タジキスタン、アフガニスタン、パキスタン等回教国)はかっての蒙古帝国の一部。更に中欧、東欧はオットマン帝国と、オ-ストロ・ハンガリ-帝国が相争った地域。現代的に解釈すれば、中欧、東欧、旧ソ連諸国、中東の弱小航空業社が、熾烈な競争に敗れた地域で弱肉強食で航空機の利用客を奪い合う構図と成っている。此処でも地政学的な利点を歴史上で実証して来たトルコがオットマン帝国滅亡後100年を経て又目を覚まし始めたと言うのが注目を浴び始めた理由。
  •   アラビア湾岸のエミレ-ツ、カタ-ル、エジハド航空の脅威に晒された欧米諸国は突如トルコと言う忘れかけた新勢力の台頭に仰天したと言うのが実情。特にトルコの地政学的な優位性、欧州との歴史的な関わり合いでは湾岸諸国とは全く別なものとの認識。トルコが湾岸諸国の様な脅威に成るか否かは別として歴史的に民族・文化が異る勢力の台頭は、フン族(フィンランド、ハンガリ-、トルコ)の侵入で民族大移動が起き、蒙古帝国の西征、オットマン帝国の出現で東ロ-マ帝国は滅亡、オットマン帝国のバルカン制圧、これにキリスト教対回教、最近は中国の台頭、古くは日本の黄禍論等欧米の潜在意識を刺激するものがあろう。蛇足だが、かっては、日本語はフィンランド、ハンガリ-、トルコ語と共にアルタイ・タタ-ル語属と考えられていたが、共通基礎語彙の一致が見られず違う言語と考えられているが、文法的には日本語とトルコ語の共通性は認識されている。トルコは明治維新以降の日本を模範として日本の背中を追って来た。Istanbul空港のAtaturk (アタチュルク) 空港は新生トルコの建国の父ケマルパシャの尊称(トルコの父-アタは父、チュルクはトルコ)を冠しているが日本をモデルに新生トルコを建国し、同じ蒙古族、同じ地震国、同じ天敵ロシアを日露戦争で日本が破ったと言うので大の親日国家。
  •  但し本欄で取り上げた最大の理由はビジネス機に就いては日本と対照的で参考に成る事も多い。

日本は交通大国だがトルコは鉄道もIstanbul(人口1200万人)Ankara(500万人間は)間の距離は東京-大坂とほぼ同じで6時間半。(現在は高速鉄道を建設中)鉄道の利用は最近迄交通機関利用の10%。国土は東西1600㎞、南北600㎞で中間地域は乾燥地帯の過疎地域。経済力も向上したので鉄道、道路の建設より空運が適している。

ビジネス機は未だ揺籃期だが既に126機と日本を大きく上回っている。Gulfstream IV, V, Bombardier Global Express, Falcon 2000, 7Xの様な上位機種もあるが、Citation V, VI, VII, XLS, Sovereign等幅広い機種を揃えている。日本が注目すべきは近距離用のCitation MustangやEclipse 500等マイクロジェットも買い始め、Air Taxi fleetを充実させる計画を進めている。今後注目すべき進展が有れば本欄で取り上げる。

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